2016年2月2日火曜日

ニュース解説

理事長の中村嘉孝です。

本日は卵子凍結による出産の件で取材が相次ぎました。取材を受ける側がニュース解説をするもの何なのですが、報道は限られた時間とスペースの中で、事実関係を厳密に表現しようとするため、かえって本質がわかりにくい場合があります。また議論の分かれるところを両論併記するのはよいのですが、お互いに反論の場があるわけではないので、論点が噛み合わないままになってしまいます。

さて、「これまで17人が体外受精したが、この女性がはじめて」という部分をごらんになって、「やっぱり、凍結卵子ではなかなか妊娠しないんだ」と思われた方も多いでしょうが、これは、現状では卵子を凍結されるほとんどの方が40才を超えているためです。

30代後半から卵子の染色体異常が増え、凍結卵子の中でも正常なものの割合が減ります。だとすれば数をたくさん取ればいいのですが、年齢が高くなると、排卵誘発剤で刺激しても卵巣の反応が悪くなり、取れる卵子の数も少なくなってしまいます。

だから、生殖医学会の「40才を超えてからは推奨できない」というのは、卵子も若いうちから保存しておいた方がよいという話と解すべきであって、すでに40才を超えている方が、可能性を少しでも高めるために卵子凍結するのは、当然、理にかなった選択です。

30才の卵子であれば30才の体外受精の妊娠率、40才の卵子であれば40才の体外受精の妊娠率と同じことです。以前、「卵子凍結の妊娠率が体外受精の妊娠率より低い」という報道がありましたが、体外受精では、受精しなかった卵子、分割しなかった卵子がすでに除外されてしまっているからで、採卵された卵子一個あたりで考えると同じ妊娠率になります。

なにより、卵子凍結による妊娠の可能性がどれくらいかというのは別に難しい話ではなく、中学校の確率の計算で求めることができます。卵子1個あたりの妊娠率が10%とすると、N個の卵子での妊娠率は1マイナス0.9のN乗。凍結する卵子の数が多ければ多いほど、妊娠の確率は高くなりますが、もちろん100%にはなりません。コインをどれだけ投げ続けても、ずっと裏側が出続ける可能性が0とはならないのと同じで、これは自然妊娠でも同じことです。

たったそれだけのことなのに、卵子凍結保存についての慎重論の多くは、本質から目を背けています。社会的理由による卵子凍結は、海外の学会に行けば普通の話として出てくるので、今回なぜこれほど大きな報道となったのか、正直なところ不思議ではあるのですが、いずれにしても、これが社会的議論のきっかけとなり、そして議論のいかんに関わらず、少しでも多くの女性に卵子凍結保存という選択の存在を知っていただければと、心から願っております。












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