2018年11月28日水曜日

ゲノム編集

理事長の中村嘉孝です。

昨日から報道されている、中国でのゲノム編集。父親がHIV感染で、顕微授精の際に感染しにくくなるように受精卵をゲノム編集して、双子の女の子が生まれたという話。

見ていて思うのは、相変わらず「まだ実験的」とか「技術的にまだ未熟」というご意見ですね。

でも、ゲノム編集は技術的にはシンプルです。そして、長期の安全性など、結局、やってみないとわからない。

そもそも議論の焦点は、もし技術的に確立されているとして、やっていいのか悪いのかということなのに、本質的な立場を明らかにすることを避けて、したり顔のこのような発言が流通するのは本当に困ったものだと思っています。

今日、香港で開催中のthe Second International Summit on Human Genome EditingがLive配信されていて、He Jiankuご本人が発表するのを見ました。

下馬評と違って、まっとうに計画された、まっとうな治療だと私は思いました。

御主人がHIV陽性のケースですが、私どもでも結構おられますね。洗浄した上で受精させて凍結、培養液中のウィルスを微量定量し、大丈夫なことを確認してから移植しています。

しかし、今回の件で、もっと将来のことまで考えるべきなのだと、むしろ思わされました。

HIVについては、日常生活では感染しない、ということを強調するのがPC(ポリティカル・コレクトネス)に適った言い方になっていますが、わずかであっても感染の危険がある以上、家族がこのような方法を選択することは決して異常な考えではないです。

色々な質問が出ていましたが、最後のものが全てでしょう。
「もし、あなたの子どもだったらやりますか?」
もちろん、答えはイエスでした。

スライドの中でLuluとNanaというニックネームを付けられた二人の女の子が、元気に育ってくれるといいですね。
















2018年11月12日月曜日

米国人類遺伝学会に参加しました

理事長の中村嘉孝です。

先月、米国人類遺伝学会に出張し、CRISER/Cas9による遺伝子編集を行うためのデータベース操作のトレーニング・セッションなどに参加してきました。

興味深かったのは「Beyond “Other”: Working Toward a Standard Ontology for Diverse Populations」というタイトルのワークショップ。

直訳すると、「『他者』を超えて:多様な人間集団に対する標準的存在論に向けての取り組み」ですが、要は、人種などのように人をカテゴリー化するにはどのようなやり方があるのか、そもそも、そのようなことが可能なのかを検討する内容です。

一体、何をするのかよくわからないまま申し込んでいたのですが、学生のようにテーブル毎のグループディスカッションでした。1時間半ほどの時間でまとまった議論になるわけでもありませんが、人種ということについて、もう一度考え直すよいきっかけにはなりました。

精子バンクや卵子提供では同じ人種でのマッチングの希望が多いですが、例えば、何をもって「日本人」とするのかは、非常に難しいですね。

人種について論じることは、差別のこともあってセンシティブではありますが、かといって人類は皆同じ、というのも欺瞞だと思います。この点については長くなるので、また別の機会に。

学会では、他にも面白い講演がありました。会長招待のシンポジウムで、学術的というよりは一般的な内容なのですが、アフリカの洞窟で太古の人類の骨を発掘しているウィスコンシン大学のジョン・ホークス教授による人類の進化についての話です。

遺伝子解析によって現生人類はネアンデルタール人と交配していたことがわかっていて、従来のように単純に枝分かれしていく進化のイメージは誤りで、途中で枝と枝が複雑に交わるイメージが正しいということでした。人種ということを考える際にも、同じことが言えますね。

さて、ホークス教授によると、以前は発掘した骨の形やサイズを比較して進化の研究をするだけだったのが、遺伝子解析ができるようになってから急激に色々なことが分かるようになってきたそうです。

ご本人いわく、
「洞窟を出て骨の遺伝子解析をしたら一躍、世界の注目を浴びたんだけど、世界中の遺伝学者がすぐに真似をして、もっとすごい研究発表をするようになって相手にされなくなったので、また、すごすごと洞窟に戻った。」
とのことでした。

最近は生殖遺伝の分野が急速に進んでいます。弊法人でも遺伝学のエキスパートを迎えており、新たな領域に積極的に取り組んでいます。